RX-8のエンジンOHを請け負いました。

夫婦でRX-7とRX-8に乗っている変わった?オーナー様です。

旦那のFDは数年前に会社の休暇を利用してツーリングに行った北海道で
初日にダイアグ45を発症して走ることを全く拒否して、
仕方なく北海道のディーラーに預けられ、旦那は友人のクルマに同乗して北海道を一周して来ました。
そのまま、フェリーに積み込んで着いた先の、当時の僕の勤務先のガレージで夜中に修理して
兵庫に帰るという曰く付きのクルマの持ち主です。

北海道から帰ってきて
にわか修理中・・・
6年くらい前(懐)

奥様のRX-8は最近始動不良を起こしだして、明らかに圧縮低下の症状が出始めました。
行く末を色々検討されましたが、どうしても6速MTしか乗り方を知らない奥様は、
ATなんて運転したことないのできっとシフト操作を間違ってコンビニに突っ込むかもしれない・・・
と旦那を説得して、”格安でシールだけ交換するOH”のコースを選択されました。
しかも旦那を人質に差し出して勤労奉仕させるという酷い方法です。

まあ、作業は若い人たち+ゴリさんで粛々と進み、
降ろしたエンジンを分解してみると残念なことにローターハウジングにも「悪魔の爪跡が」出来ていて
早速、前後ローターハウジングも新品交換で追加料金が発生です。
「まあ、バラシちゃったら仕方がないのでお金は何とか工面してください。」
悪徳チューニング何とかの典型的なやり口です。

ディーゼルの作業の合間や残業でエンジンを組み上げて、搭載したまでは早かったんです。
始めてやったにしては上出来で、エンジンも一発で始動し喜んだのですが・・・

なにやら、アイドルでハンチングします・・・?

エンジンの慣らしもまだなんで、圧縮も低いからこんなものかなと楽観していました。

しかし、しばらくエンジンをラッピングしたり、軽く走ってみたりしましたが、
アイドル領域になると、「ブルブルブルブル↑ヒュ~ウッ↓時々プスッ!」っと…
みんなでトラブルシューティングしてましたが、なかなか決め手が見いだせず・・・
日中はディーゼルの作業で一杯一杯で夕方からやりだすんですが・・・これが毎日捗らず。

社長が痺れを切らして、「なんとかして、残金回収してこい!」っていうことで、
一番暇そうな僕が引き継いでやってみることになりました。

この時点で、日曜日のPM5:00です。

そもそもRX-8のRENESISなんて詳しく見たこともないし、
乗ったこともないし、エンジンルームのどこに何があるのかさっぱり分かりません。

でも、このクルマは数年前に社長に言われるがままにデータを変更した
コンピュータになってまして、ある意味非純正のデータなので、
一旦オリジナルに戻してみようと思い付き、
パソコン繋いで現状のデータを吸い出してみるのですが、
数年前には普通に読み出せたデータがなぜかエラー連発で読み出せず、
オリジナルを強引に上書きしようかと思いましたが、
書き込みに失敗するとエンジンの掛からないデカい置物になる恐れがあるので、
不本意ながらデータのオリジナル化は断念してこのままやり切るしかないと苦渋の決断です。

RXー8はFDとは世代も違い、PCMによるエンジン制御も刷新されて、
今時のCANによる制御になっています。

ですので、いつもSKYーDで使っている機材とパソコンを繋いでデータをモニターしてみます。
いろいろなパラメーターが参照できるのですが、なんせ初めてなので一から勉強です。

走行中や、エアコンを入れるなどアイドルアップしているときは、
まあまあ普通に乗れるんですが、停車してアイドリング状態になると機嫌が悪い。

クルマは停車しているのに、PCMがアイドリングを感知していないのかもしれないと思い、
スロットルセンサーの値やアクセルペダルの開度センサーの値をモニターしてみますが正常。

じゃあ、クラッチスイッチや、ニュートラルスイッチはどうでしょう・・・正常。

こいつはスロットルが電子制御でモーターでコントロールするタイプなので、
バッテリー解放後はスロットルが今どの位開いているかを学習させてやらないといけないので、
再学習させたりと、考えられることはやってみましたが現象は好転しない

そのうち、インパネのエンジンチェックランプが点灯して・・・
故障コード(DTC)を見てみると“燃料リッチ”とのこと・・・ますます泥沼です。

手の付けられるところから、エアフロメーターやスロットルボデイは外して
軽くクリーニングしてみましたが、全く改善せず・・・

この辺で1日目終了。なんとなくA/F(空燃比)が安定しないことは読み取れたが、
そんだけで終わり。

FC後期で電子制御が進んだロータリーエンジンは、弱点である燃費の悪さを
カバーするためにPCMがアイドリング状態と判断すると少しずつA/Fを薄くして
安定するギリギリを探しながらフィードバック制御します(リーンベスト)
恐らく最新型RENESISでも同様であろうと推測されますが、パソコンでモニターした感じは
そんなにうまく制御されていない。

月曜日は定休の為、朝からネットサーフィンで手あたり次第RX-8に詳しい先輩のページを読み漁る。
また、会社に社長が昔仕入れた”新型車の紹介”の分厚い本があったので、
これもひも解いてみて、一日が暮れる・・・

都合3日目、またしてもPM5:00~
昨日の調査の結果で、A/Fのセンサーが結構壊れるらしいという情報が浮かび上がった。
RX-8はエキマニにA/Fセンサー(ワイドバンドで空燃比が11~18くらいまで適応)と
触媒にO2センサー(空燃比14.7で反応)の2組のセンサーがついているらしいのですが、
A/Fセンサーが結構壊れるらしく、この場合に出るエラーコード(DTC P0172)が
まさに空燃比リッチを示すので、これはとても怪しいと思いました。

ディーラーに価格を尋ねたところ2個で四万円くらいするらしく思ったより高かったので、
試しに替えてみて・・・というのは外れた場合の信頼問題になりそうだからちょっと躊躇して
先ずは外してクリーニングしてみよう、きっとOH後の一発目の始動で組みつけの際の油分とかが
べったりで汚れているに違いない・・・

で・・・二つとも外して見ましたがそれはこんがり焼きあがって綺麗なセンサーが出てきました。

見た目は綺麗でもきっとこのセンサーたちが原因に違いないと、
代替品が無いので念入りにクリーニングして多少でも違いがないか、
再度取り付けてエンジンを掛けてみる。

温間再始動モードのときはそこそこなんですが、通常のアイドル領域になると
以前と同様にタコメーターがフラフラです。

怪しいことは、怪しいのですが
とことん原因を追求して「間違いなくこれに違いない!!」レベルまで達しないと
気が済まないので一旦保留して次の原因を探してみます。

ゴリさんが気を回して、電気図面を入手して来てくれたので
もう一つ気になっているインジェクタ(IJ)周りの配線もチェックしてみます。
RX-8のハイパワータイプと呼ばれるこの車両はIJが6本もあるので
さらにややこしい・・・

図面の配線色記号を分かりやすいように漢字に書きなおして再チェックしてみます。
慣れないものですから・・・というか初めてなのでインマニ外すのも一苦労です。
まあ、その辺は杉田メカに一任です・・・

ようやく見えてきた・・・IJが奥の方で見えない・・・
しかも、今回使い回しのメインハーネスは配線の色が褪せてしまって・・・色が見えないわ・・・

それでも杉田メカと二人で順番にチェックしていくと、
どうも配線色を見誤って刺し間違ってる??というIJがあり、
落ち着いて配線色を確認しながら、これで間違いないというくらい確認してから
インマニを組みなおし・・・

エンジン再始動!!

水温が上がって、冷間モードから抜けて
アイドルモードに切り替わります・・・

アイドル安定しました!!

翌日、周辺を軽く試走してみました。
慣らし中なので1~2速は3000rpm、3速からは2500rpm以下ですが、
なかなか、こいつイイ感じで吹けますね。
NAロータリーって初めて乗りましたが、これはこれで面白い。
丁寧に慣らしをしてもらって、高回転までパチコ~ンと回してみたいですね。

今回は色々と勉強になりましたが、
やはり機械は正直なので、調子が悪いということはどこかが間違っていて、
間違っていることを放置して、別の手段で誤魔化すのは本筋から外れることが
身に染みてよくわかりましたね。

ODB2やMAZDA IDSによるエラー診断も鵜呑みにして、
A/Fセンサー交換していたら、この不調のループからは脱出出来ず
修理代がかさむばかりでオーナーの信頼を裏切ることになったかもしれません。

もう、完治したのでなんとでも言えます(苦笑)

ちなみに、正常になったアイドリング領域のデータの変位を見てみます。
右列の中段 「O2S11,mA」がA/Fセンサーの値で
マイナス=リッチ 0=ストイキ(14.7) プラス=リーン を示します。
右列の上段 「SHRTFT.OBDⅡ」は燃料噴射補正値の様です。

PCMはA/Fを監視しながら補正値を少なくしていき
アイドルが不安定になると、補正値を少し足してしてA/Fをストイキに戻す
というような感じでアイドルを安定化させているようです。
じつに賢いね、健気で泣けます。

これから、エンジンの慣らしが進むとどのように変化するか興味深いですね。