767B復活物語

2015年6月、イギリスで悲劇は起きた。

広大な私有地内を開放し、約1.8kmの細い私道を駆け抜けるグッドウッド・フェスティバル。20年以上続く、世界的なカーイベントである。
その年、グッドウッドにはオレンジとグリーンに彩られた鮮やかなマシンが招待されていた。星野氏の所有するルマン・マシン「767B」。世界に3台しか存在しない貴重なレーシングマシンだ。

その心臓部に世界唯一の“ロータリーエンジン”を持つ767Bは、マフラーが奏でる甲高いサウンドと共にグッドウッドで多くの観客の注目を集めていた。しかし、イベントの走行中不運にもコントロールを失いコーナー脇の緩衝材へ突っ込んでしまったのである。引き出されたマシンは運転席側のフロントを大きく損傷し、見るも無残な姿となってしまった。

レーシングマシンは普段私たちの乗る一般車とは開発工程が違う。ましてや767Bはこの時、開発から30年近く経とうとしていた。故に修理のための予備部品は調達できず、修理は絶望的となった。

こうして大きな傷を負ったまま767Bは倉庫の中で眠ることとなり、美しかったアーガイル模様のボディは埃を被っていったのである。

――それから実に2年が経とうとしていた。世間から事故の記憶が薄らいでいた頃、767Bを蘇らせるために水面下では復活プロジェクトが始まっていた。

プロジェクトチームのメンバーはいずれもプライベーターと呼ばれる一般人であったが、誰しもが思いはひとつであった。

『もう一度767Bを走らせたい』

後のTeam 767B Hoshinoの誕生である。

私たちはこの時、開発から30年という時を経たマシンの腐食具合を知る由もなかった。

目次

-1- 解析編
767B復活物語-2-
767B復活物語-3-
767B復活物語-4-
767B復活物語-5-
2018-01-29T03:17:34+00:00