はじめに

加古川から高速道路を走ること約3時間。視界の脇を流れていく、まだうっすらと雪を残した山肌。ふとあたりの景色が開けると、遠く向こうに街並みが広がっているのが見えた。

高速を降りると、やがて街中を路面電車が行き交い始める。最新のナビゲーションに翻弄されながらも、私たちは川の街“広島”の市街を走り抜け、約束していた待ち合わせ場所を目指した。

ちょうど昨日の1月30日、創立92年を迎えたマツダ本社は悠然とその姿を現した。私たち二人がエントランスをくぐると早速、美しい鼓動デザインをまとったクルマたちに並んで、レストアされたR360クーペが出迎えた。

受付で来賓のバッジを受け取り、身なりを整えていると、向こうにふとその人影が見えた。

松浦國夫氏。マツダのレース活動を最高峰のロータリーエンジン技術者として支え続け、日本車史上初のルマン総合優勝へと導いた“武将”だ。今宵、私たちにそのレース活動の原点から世界の頂点へ立つまでの道のりをお話いただく機会を設けていただいた。

寡黙な生粋の技術人というイメージが強い松浦氏だが、挨拶を交わすと自然と世間話に花が咲く。温かい広島訛りで、昨年の思い出などを語り合った。

やがて、ぽつりぽつりとその歴史の話がこぼれ始める。私は聞き漏らすまいと、ペンを握る手に力がこもったのであった--

2018年3月初旬より連載開始予定

BACK HOME
2018-02-03T02:25:01+00:00